書斎訪問

第1回 澁澤龍彦の書斎 画像420枚、動画5本一挙公開!


八月半ば、まだ盛夏たけなわの頃でしたが、北鎌倉の澁澤龍彦宅を訪問してきました。

書斎は澁澤氏の生前そのままの形で残されており、澁澤氏がちょっと席をはずしただけといったたたずまいです。

よく雑誌に「作家の書斎」といった企画ページがありますが、あれの一番の問題点は、作家の書斎といいながら、書棚の本が何なのか、いくら目を凝らしても分からないことではないかと思っておりました。

ですから、自分がそういう企画を実行するときは、徹底的に書棚の本の背文字が見えるような形で取材してこようと思ってました。

澁澤氏の書斎を見せていただけることになって、さっそく「背文字完全読破計画」を実行に移しました。

その結果は、ホームページでごらんになっていただけばおわかりと思いますが、なかなか思ったようにはいきません。取材時間とデータ量、それに背文字まで見えるように撮影するという条件を考えると、望遠つきのデジタルビデオカメラで書棚をなめていき、画像はあとでそのビデオテープから静止画として切り出すというのが一番合理的な方法ではないかと思われました。

その通りに実行したのですが、遠い距離にあり、あまり光の届かない書棚の上のほうにある本は、無理やり48倍の最大の望遠で撮影しましたが、それだけの条件の悪さを突破してしまうハイテク機器などあるはずもなく、書籍はおぼろな影のように映るだけといった場合もままありました。第一、ビデオから切り出した画像ですから、基本的に鮮明さがたりません。(ビデオで見ていると実に鮮明なので、それを見ていただけないのが残念です)

澁澤氏の1階の書斎は、机の周りの壁が全部天井までの書棚になっており、ここにあるのが当然のことながら澁澤氏が日常的に手にとっていたもっとも親しい本でしょう。

この書棚についてはほぼ完全にビデオで収録してきました。タイトルが完全に読めるほど鮮明ではないのが残念ですが。特にフランス語の本は背文字が日本語の本のように大きい活字ではないので、よほどクローズアップにしない読めません。しかし本の色や形は映っているので、知っている人にはかなりの程度判断がつくのではないかと思われます。

書斎の書棚の壁の一角に目立たない扉があり、そこをあけると2階までの吹き抜けになっている書庫があります。ここには、日本語の本で、澁澤氏がさほど頻繁には取り出さなかったような本が並んでおり、また澁澤氏の著作がまとまっておいてあるコーナーがあります。通路は人が一人やっと歩けるかどうかくらいで、その両側の壁に天井まで本がつまっています。ここはあまりに膨大すぎるので、雰囲気が分かる程度に一部だけを撮影してきました。

書斎の隣が居間になっており、ここの二階までの吹き抜けの壁にいろいろな絵画がかけられていますが、中でも金子国義氏の大きな絵がメインイベントで、澁澤夫人が犬とともに座っているソファなどはこの絵に見下ろされる形になってます。

映してきたビデオから静止画像を切り出す作業をやってみると、枚数が予想をはるかに上回ってしまい、あれよあれよという間に420枚にもなってしまいました。

あまりの多さに、2階の寝室の壁際にあった「古事類苑」「広文庫」「群書類従」「続群書類従」などが並んでいる棚は掲載を割愛しました。同じものがずらずら並んでいるので、迫力はありますが、画像として切り出すのはあまり意味のあることとは思えませんので。

しかし420枚をもってしても、静止画だけでは書斎の雰囲気がどうしても出ないので、ビデオ動画も必要だと思いましたが、ご存知の方もいるでしょうが、たったの1分の動画でもAVIファイルで170メガとかのばかみたいなデータ量になり、MPEG圧縮しても3メガくらい。これではネットに乗せられません。WindowsMediaで圧縮すると250Kという驚異的な圧縮率なので、このメディアを使う以外に選択肢はないようですが、この圧縮率ではただでさえ見づらい本の背文字が見えるようにするのは至難です。

それやこれやで、妥協して高画質は諦め、ないよりもましということで動画を5本ばかり乗せておきました。もっとよく見えるのではと期待した方には失望を与えてしまうかもしれませんが、データ量の関係で、ネットに掲載するにはこのくらいの画質にせざるを得なかったとあらかじめお詫びしておきます。

ここは澁澤氏の仕事について述べる場所ではないので、何も言いませんが、澁澤夫人が語った中で印象的だった一言を書いておきます。

澁澤夫人が言うには、澁澤は自分の本が自分が死んだ後、多くの人に読まれるようになると確信をもっていた、とのことです。今日の澁澤人気を当人が予言していたわけです。夫人は「澁澤はそういう編集者的というか、マーケティング的というか、そういう能力が非常にあった人でした」と述べています。