書斎訪問

第3回  江戸川乱歩の土蔵


この企画をはじめたときから念頭にあったのは、澁澤龍彦の書斎と江戸川乱歩の土蔵であった。この二つはぜひとも見てみたいと思っていたのだが、第一回で澁澤氏の書斎をやり、今回は乱歩氏の子息・平井隆太郎氏の特別のはからいで、伝説の乱歩の土蔵を見せていただけることになった。

澁澤宅も乱歩宅も、書斎の主はすでに故人でありながら、主人の生前の姿そのままに書斎が保存されているという共通点がある。

蔵書家というだけならば、彼ら以上に多くの本を持っている人は珍しくはない。彼らの書斎を見てみたいと思わせるのは、単に、外国文学の紹介を始めとするアウトプット(作品)が魅力的だったばかりでなく、生き方のスタイルが魅力的だったからであり、彼らの精神生活の場、(あるいはアウトプットを生み出すインプットの現場といってもいい)はどんなものだったのだろうかという好奇心をかきたてるからだと思われる。

書斎が主人亡き後も、生前と変わらないように保存されてきたのも、家族の人たちの心の中にも、彼らの精神生活の現場を保存しておきたいという気持ちが強く働いたからではないだろうか。

乱歩の土蔵は土蔵といっても、母屋のほうから廊下を伝っていけるようになっている。今はまったく使っていないから、土蔵の中は冷えきっている。照明はあるにはあるが、照度が暗く、書棚の下のほうにはほとんど光が届かない。

 

静止画に切り出したものをご覧いただければ分かるが、画質はいいとは言いがたい。澁澤氏の書斎のときも照明が暗くて、ビデオに映るのかどうか不安だったが、この土蔵に比べればまだ条件はいいほうだったということがわかる。

いつものように、書棚の本の背文字が見えることを最優先にしているので、小さな判型のものや横向きに寝ている本を除いては、本の下の部分がカットに収まっていない。

土蔵の中にある蔵書は膨大であり、全部をウエッブに掲載したら静止画は優に1000枚を超えてしまいそうなので、かなりの部分を割愛せざるをえなかった。澁澤氏のときもそうだったが、「群書類従」「国史体系」「有朋堂日本文学全集」などの揃い物は数カットだけを掲載してある。実際はひとつのシリーズもので書棚の1本くらいが全部占領されていると思っていただきたい。

英語のペーパーバックもあまりに多すぎて、相当割愛してある。

書棚の全体を見て、推理ものや英米文学が多いのは予想通りだろうが、日本の古典がたくさんあり、また哲学や人文、社会科学関係の本が多いのは意外かもしれない。ブルクハルトの「ギリシャ文化史」、J・A・Symondsの「Renaissance in Italy」をはじめとしてギリシャ文化に関する本やLOEB叢書などギリシャものが少なくないのも目に付く。

土蔵には2階もあって、こちらには和綴じの本などが包みに包まれたままの姿で保存されている。静止画はほんのさわりだけを10カットくらい掲載しておいたが、実際は包みはこの10倍くらいはある。ここはきちんと調査したら宝の山だと思われるが、整理がほとんど手付かずのままである。